他人の不幸は蜜の味という感情
クラスメイトの成績が落ちたとき、ママ友が不倫トラブルで離婚したとき、芸能人が交通違反で逮捕されたとき、同僚がミスをして叱られているとき、チームメイトがレギュラーから外されたとき……。人は他人の不幸を見て「ざまあみろ」と思ってしまうことがあります。
そこまで強く思わなくても、
「自分にチャンスが回ってくる」
「これで差が縮まった」
「少し安心した」
と感じた経験は、多くの人にあるはずです。
こうした感情は表ではあまり語られませんが、人間に共通して見られる心理だと考えられています。
そしてこれは性格が悪いから起きるのではなく、人が社会の中で生きていくために自然に生まれる感情でもあります。
シャーデンフロイデという心理
他人の不幸を見て安心したり満足したりする感情は、心理学では「シャーデンフロイデ」と呼ばれています。シャーデンフロイデとは、他者の不幸に対してプラスの感情が生じる現象のことです。
この感情は誰にでも起こりうるものであり、実験によっても確認されています。
ただし、この感情はどんな不幸に対しても起きるわけではありません。
死や大事故のような深刻すぎる不幸に対しては生じにくいとされています。
そこまで重大な出来事に対しては、多くの人が同情や恐怖を感じます。
また、自分とはあまりにも遠い存在に対しても起きにくい傾向があります。
例えば、遠い国の王族や、まったく関係のない人物、動物などに対しては、この感情はあまり強くなりません。
シャーデンフロイデが最も起きやすいのは、自分と立場が近い相手です。
性別が同じ、年齢が近い、能力が似ている、地位が近いなど、比較しやすいほど強く現れます。
なぜ人は他人の不幸をうれしいと感じるのか
人は他人と比較しながら生きている
人は無意識のうちに、自分の位置を他人と比べて確認しています。自分より優れている人を見ると劣等感を感じ、
自分より下だと感じると安心します。
そのため、自分より上にいると思っていた相手が失敗すると、順位が入れ替わったように感じてほっとしてしまうのです。
これは人間が社会の中で生きる以上、避けることのできない心理だと言われています。
不公平が正されたと感じる
成功している人が失敗したときに、すっきりした気持ちになることがあります。これは単なる意地悪ではなく、「不公平が解消された」と感じるためです。
ずるをしている人
自慢ばかりしている人
自分より恵まれている人
こうした相手が不幸になると、世界のバランスが戻ったように感じてしまいます。
人は完全な平等ではなくても、公平であることを求める性質があります。
そのため、不公平に見える状態が崩れると安心してしまうのです。
集団の中で順位を守ろうとする本能
人は集団の中で生きる動物です。そのため無意識に、自分の立場を守ろうとします。
誰かが下がれば、自分は相対的に上がります。
この感覚が、他人の不幸を喜んでしまう原因のひとつだと考えられています。
特に学校、職場、ママ友、兄弟など、同じ集団の中ではこの心理が強くなります。
近い相手ほど強く起きる理由
人は次のような相手に対して、嫉妬を感じやすいと言われています。- 自分と程遠いほど優れている人
- 自分よりほんの少し優れている人
- 自分と同じくらいの人
- 自分より下の人
最も嫉妬が強くなるのは、「少しだけ上の人」です。
差が小さいほど、自分と入れ替われそうに感じるため、相手の失敗を望む気持ちが生まれやすくなります。
逆に、あまりにも遠い存在には嫉妬もシャーデンフロイデも起きにくくなります。
男女で違いがあるとも言われている
研究では、この感情が生じるきっかけに男女差が見られることがあります。女性の場合は、同性への嫉妬から生じることが多いとされています。
幸せそうに見える人、注目されている人、得をしている人などに対して、引きずり下ろしたいという感情が働きやすくなります。
自慢話が多い人や、SNSで幸福を強くアピールしている人が嫌われやすいのも、この心理と関係しています。
男性の場合は、不正やルール違反など、相手の行動に対する評価が関係することが多いとされています。
ずるをしている人が失敗すると、正義が勝ったように感じる傾向があります。
いわば勧善懲悪を望む心理に近いものです。
「自分は他人の不幸を喜ばない」は本当なのか
聞き取り調査では、「どんな人に対しても不幸があれば気の毒に感じる」と答える人が多くいます。しかし本当に、どんな相手でも同じように感じるのでしょうか。
自分を精神的に追い詰めた相手だったらどうでしょうか。
自分に不利益を与えた人だったらどうでしょうか。
重大な犯罪を犯した人だったらどうでしょうか。
人は、自分が冷たい人間だと思われたくないため、本音とは違う答えをしてしまうことがあります。
また、無意識に起きている感情に自分で気づいていない場合もあります。
実験では、嬉しいときに動く頬の筋肉を測定したところ、他人の不幸を聞いたときに無意識に反応が出たという結果もあります。
ネットで流行した「メシウマ」という言葉は、「他人の不幸で飯がうまい」を意味します。
現実では口に出しにくい感情だからこそ、匿名の場では表に出やすくなるのかもしれません。
負の感情だという自覚があるからこそ、それを隠そうとする心理も同時に働きます。
他人の不幸に振り回されないために
この感情は誰にでもありますが、いつも他人の不幸を気にしてしまう状態では心が疲れてしまいます。他人の不幸を喜んでしまう気持ちは、多くの場合、嫉妬や比較から生まれます。
そのため対策として大切なのは、相手を下げることではなく、自分を高めることです。
自分の努力によって実力を伸ばすほど、比較そのものが減り、嫉妬も起きにくくなります。
また、差が大きくなるほど、人は相手を競争相手として見なくなります。
他人の不幸に安心するのではなく、自分の成長に目を向けるほうが、精神的にはずっと安定します。
他人の不幸は蜜の味という感情は、人間らしさの一部でもあります。
だからこそ、それに振り回されずに生きることが大切なのかもしれません。
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