日本人は「いじわる」がお好き?!スパイト行動の研究から見える日本社会の特徴

メンタル・心理・健康

日本人は「いじわる」なのか?という研究がある


行動経済学の研究の中に、日本人の行動傾向を非常に印象的な言葉で表現したものがあります。

それが、西條辰義による
「日本人は『いじわる』がお好き?!」という研究です。

この研究では、人がどのようなときに協力し、どのようなときに相手を損させる選択をするのかを実験で調べています。
その結果として見えてきたのが、自分も損をするのに相手を損させる行動が一定数存在するという事実でした。

このような行動は心理学・行動経済学では
スパイト行動(spiteful behavior)と呼ばれています。

スパイト行動とは何か


スパイト行動とは、簡単に言えば
自分にとっても不利益になるのに、相手に不利益を与える行動のことです。

人の行動は大きく分けると次の4種類に分けられます。

利己的行動 自分が得をする
利他的行動 相手が得をする
協力行動  お互いが得をする
スパイト行動 自分も損をするが相手も損をする

合理的に考えれば、スパイト行動は選ばれないはずです。
しかし実験では、この行動がかなりの頻度で観察されます。

スパイト・ディレンマの実験


この研究では、公共財ゲームと呼ばれる実験が行われました。
参加者にはお金が配られ、そのお金をどう使うかを選びます。

自分のために使うこともできるし、みんなのための箱に入れることもできます。
みんなのための箱に入れると全員の利益は増えますが、個人としては入れない方が得になります。

ここまではよくある社会的ジレンマの実験ですが、さらに次の選択肢が用意されます。

相手の利益を減らすことができるが、自分の利益も減る

合理的に考えれば、この選択はしません。
しかし実験では、不公平だと感じたときに相手の利益を減らす選択をする人が多く現れました。

つまり人は、得を最大化するだけでなく、
相手だけが得をする状況を嫌うということが分かったのです。

日本人はスパイト行動が多いという結果


この実験は、日本だけでなく、アメリカや中国などでも行われました。
その結果、日本人は比較的スパイト的な選択をしやすい傾向があると報告されています。

自分が損をしてでも、不公平な相手を許したくない。
相手だけ得をする状況を受け入れにくい。

この傾向が、「日本人はいじわるがお好き?」という印象的な表現につながっています。

なぜ人はいじわるをしてしまうのか


このような行動は、特別な状況で起こるわけではありません。
日常の中でもよく見られます。

例えば、コロナ禍でノーマスクの人に対して強い批判が起きたことがありました。
感染リスクという理由もありますが、それだけではない感情もあったように思います。

自分は苦しくてもマスクをしているのに、なぜあの人はしていないのか。
みんな我慢しているのに、なぜ守らないのか。

このような感情は、単なる恐怖や不安だけでは説明できません。

スパイト・ディレンマの実験は2005年に行われています。
つまりコロナがなくても、人はもともとこのような心理を持っていることが分かります。

人は合理的に行動するだけではなく、
不公平に対する怒りや、相対的な損得で判断してしまうのです。

同調圧力によって成り立つ社会


日本では昔から、同調圧力が強い社会だと言われています。
周囲と同じ行動を取ることが求められ、輪を乱す人に対して厳しくなる傾向があります。

例えば次のような場面を考えてみてください。

「PTAは任意団体だから加入する必要はない。
卒業記念品の代金は実費で払うから問題ない。」

一見すると合理的な意見です。
しかし実際には、品物を選び、購入し、仕分けし、配布するという手間があります。

もし加入している人が95人、加入していない人が5人いたとしたらどうでしょうか。

どうせ95人分まとめて買うのだから問題ないと考えることもできます。

しかし一方で、
95人はお金も払い、役員も引き受け、協力してきたのに、
加入していない人が同じ物を受け取るのはずるいと感じる人もいるでしょう。

このとき多くの人が感じるのは、効率よりも公平です。

自分が損をしてでも、不公平な状態を許したくない。
平等のために足を引っ張りたくなる。

これはまさにスパイト行動と同じ構造です。

任意という名の強制で社会が成り立つ


日本の社会では、任意と言いながら全員が参加することを前提としている仕組みが多くあります。
自由と言いながら、従うことが求められる場面も少なくありません。

このような環境では、
協力しない人に対して厳しい感情が生まれやすくなります。

そしてその感情が、
自分も損をしてでも相手を損させたいという選択につながることがあります。

つまり、日本社会は
同調圧力と公平意識によって維持されている側面があり、
その裏側にはスパイト行動の心理が存在しているのかもしれません。

日本人はいじわるなのか、それとも社会を守っているのか


この研究は、日本人の性格が悪いと言っているわけではありません。

不公平を嫌う
ずるを許さない
ルールを守ろうとする

こうした傾向が強い結果として、スパイト行動が多く見える可能性があります。

協力を維持するためには、ただ乗りを許さない人が必要です。
全員が好き勝手に行動すれば、社会は成り立ちません。

自分も損をしてでも不公平を正そうとする行動は、
いじわるではなく、集団を維持する仕組みとも考えられます。

「日本人はいじわるがお好き?」という言葉は、
社会を守ろうとする心理の裏返しなのかもしれません。


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